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日本狼と有色紀州犬 JAPANESE WOLF KAMI and KISHU-DOG OF COLOR

有色紀州犬とは

紀州犬とは、広大な紀伊半島の山岳地帯にいた熊野犬、日高犬、那智犬、太地犬などの地犬達の総称です。昭和9年に天然記念物に指定されました。

白い紀州犬を思い浮かべる方も多いと思いますが、元々は有色が多く、尻尾は狼の様な差し尾、または巻き尾。

当杜の紀州犬も和歌山県美山村からの日高系で、オオカミ色の毛色配置が全身に渡って色濃く残っています。肩幅も狭めで全体的に細めの胴体の動作は実に野性味があり、肩甲骨から頭を下げて偵察するように歩みを進めるという特徴があります。犬と言うよりは、正にオオカミの様です。

 

警戒心が非常に強く、地頭も良く、人の言葉を文章からも理解し、空気を読み、極めて勇敢で、家族を命がけで守護し、険しい森にあっても俊敏で、鹿や猪を相手に一歩も引かない強い気質を備えています。また性格の性質としても7割は狼、犬っぽさはせいぜい3割程度といった具合です。

杜を駆け回れば、御神気の素晴らしい神域を発見し案内をしてくれる神使であり、大いなる自然の稜威の中に生きるという事を、体現してくれているようでもあります

紀州犬の起源

今は絶滅したと言われるニホンオオカミ(大口真神)が祖先の、紀州犬。優秀な狩猟犬である紀州犬は、その昔、熊野の山奥で峰弥九郎という猟師が助けたニホンオオカミが、その恩返しに届けた子狼《マン》の子孫です。民話として語り継がれ、『まんが日本昔ばなし』にもなっています。
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​日本狼と紀州犬の交雑

上記の起源に加え、マタギ達はしばしば紀州犬を山に繋ぎ、狼との交配を行っていました。

和歌山県には、そのような言い伝えが実に多く残っているようです。

祖先には何件もの内閣総理大臣賞を受賞している血統の有色紀州犬と、17年と言う長い歳月暮らし実感しておりますが、有色紀州犬は犬と言うより野生動物寄りだという性質が、随所に現れています。山に放つと、特に。柴犬を昔2匹飼っていましたが、全く違う生き物なのです。

紀州犬とマタギ

和歌山県美山村のマタギ村長・池本功氏(年ご逝去)は、日高系有色紀州犬を保存していかれるにあたり、紀州犬が紀州犬らしく暮らせるよう、御自身がマタギにまでなられた方です。池本村長と紀州犬の特集を、Shi-baという雑誌でご覧頂けます。(2004年5月号 Vol,16 67-75頁)

当杜の血統書付き有色紀州犬

血統書登録団体:社団法人 天然記念物紀州犬保存会

登録番号:犬籍簿 第T24-13号

生年月日:平成19年10月9日

登録年月日:平成24年4月27日

紀州犬とニホンオオカミとの関りについておススメの文献

*ニホンオオカミを追う / 世古 孜

《ニホンオオカミ(大口真神)が祖先の狩猟犬・紀州犬の血の中に、かつてのニホンオオカミの姿を追う》といったような内容。著者はマタギ・狩猟犬ブリーダーだそうです。この観点に至られた経緯は、実に良く腑に落ちます。

紀州犬以外でも、ニホンオオカミとの交雑伝承のある和犬を長年飼い、それもマタギとして狩猟されている人の声からこそ、ニホンオオカミらしき習性や生態など、実感として分かるものがあると思います。

その様な犬種を大自然の中で飼っている訳では無く、オオカミらしさが一体何なのかが間近・日々の実体験として把握をしていない現代人が、偶然の目撃やトレイル・カメラで野犬を判断しようと試みるのは、それこそ雲をつかむようなものです。「100%ニホンオオカミでなければ、オオカミではない」と、ロマン追いの為に紀州犬の歴史を全否定する解釈もあるようですが、真性のサイエンスとは両方の側面から時間をかけ、公平な研究を重ね、紀州犬の保存及びもどり狼の検討をしながら、調査し続けることに思います。

*紀州犬 熊五郎物語 / 甲斐崎圭 (著)

狼の血を引く紀州犬は本来、猟犬です。名猟犬の血を正統に受け継ぐ紀州犬・熊五郎は、北海道でヒグマやエゾシカにも果敢に立ち向かった伝説の名犬。

奇跡的に紡がれた純血・熊五郎と、それを取り巻く人々との共生・信頼関係が、一頭の紀州犬を通じて語られます。

*白狼: 日本狼と紀州犬 / 神路山 金四郎

Amazon紹介文より:『紀州犬の元祖は大台ケ原山系に棲息していた日本狼だとの言い伝えがある。本編は太地犬「サチ」が狼の子「トラ」と「リユウ」を産む、発見者の源さんが飼い主となり立派な猟犬に育て上げ、紀州地方に子孫を残し、それらが紀州犬の祖となり現在の紀州犬へと繋がった。時を経て一人の男が紀州犬「鉄」と出会い、彼らの持つ不思議な力に魅せられ喜びと悲しみを分かち合った中で知らされた遺伝子の持つ偉大な力だった。後に鉄とは悲しい別れになるが彼は逆境の中を逞しく生き抜き紀州犬の歴史に残る名犬となった。』

日本狼と紀州犬のDNA解析

【日本狼は今も森に生きているかもしれない】- Japanese Wolf Ooguchi-makami may still exist -

 

最近のゲノム解析結果により、ハイイロオオカミの亜種であるニホンオオカミは、他のどの動物よりも近代の犬の系統に近いことが明らかになったそうです。

とすると剥製として残っているニホンオオカミの様に犬らしい風貌で、秩父や九州で目撃された山犬はあながち単なる野犬ではないかもしれず、実はニホンオオカミの生き残りなのかもしれないですね。野生化した紀州犬か何かかと思っておりましたが。(剥製は酷い仕上がりなものが多い。ごめんなさい。)

 

ニホンオオカミ(大口真神)が祖先の、紀州犬。優秀な狩猟犬である紀州犬は、その昔、熊野の山奥で峰弥九郎という猟師が助けたニホンオオカミが、その恩返しに届けた子狼《マン》の子孫です。民話として語り継がれ、『まんが日本昔ばなし』にもなっています。

その後もマタギ猟師達がニホンオオカミと交配させ、その特徴を色混く残す有色紀州犬ですが、今日ニホンオオカミを森で見かけることがあったとしたら、きっとこの様な風貌なのでしょう。運良く見かけていても「野犬?ひょっとしてニホンオオカミ?」と、意外と人間の方が気が付いていないのかもしれませんね。

 

研究チームの石黒直隆氏は、2011年にも《絶滅した日本のオオカミの遺伝的系統》という研究をなさっています。その系統解析によると:

 

「遺伝的に近い犬のサンプルとして紀州犬1頭とシベリアン・ハスキー犬1頭のmtDNA が含まれること,が明らかとなった.紀州犬と近いmtDNA配列を有するニホンオオカミは,国立科学博物館所蔵の下顎骨(JW237)であり,mtDNA コントロール領域内に8塩基の特定的な欠失部位が存在した[20].ニホンオオカミと遺伝的相同性を解析した犬のデータベースは600頭を越えるものであり,相同性を示した紀州犬及びシベリアン・ハスキー犬とも1頭ずつの配列は, 犬としては特異な配列であり,決してこの2種類の犬種がニホンオオカミに遺伝的に近いことを示すものではない.」

 

「今日まで解析した犬の中で,ニホンオオカミの単系統の系統樹の中に位置した犬は,上述した紀州犬とシべリアン・ハスキー犬のみである.紀州犬に関しては,8塩基の特異的な欠失がニホンオオカミ(JW237)に観察されたことと,その他の塩基置換がニホンオオカミに共通していたことがあげられる[20, 27].ニホンオオカミとほぼ同じmtDNA を有した紀州犬が,ニホンオオカミより遺伝的な血を引いた個体であったかどうかは,mtDNA の一部の結果からは到底推測できるものではない.mtDNA は母系遺伝することから,母系を引き継いでいたことも考えられる.昔から,紀州犬はニホンオオカミの血を引いていると地元では伝承されていると聞くが,真実は定かではない.」

 

と、解りやすいようでいまいち解りづらい事を述べておられますので、是非とも更に徹底的ご研究を深めて頂きたいです。どの系統の紀州犬をサンプルとされたのか、きっちり開示して頂けると良いのですけれど。最近の紀州犬は白一辺倒ですから。後、サンプル個体数として十分であったのか等。日本人の祖先のゲノム解析であっても、年々アップデートされていますしね。

 

それこそ和歌山県美山村のマタギ村長・池本功氏の犬舎の系統の日高系有色紀州犬をサンプルにして頂きたいです。その系統で、池本氏の作出された最高傑作という清冷号に瓜二つの、うちのでも良いですし。

そして川上犬、四国犬、甲斐犬など、二ホンオオカミとの交雑の伝承が残る犬種に特化して、どなたか真摯に研究して下さらないかな。柴犬や秋田犬も可愛いですし、確実にニホンオオカミの血は継いでいるとは思うのだけれど。資金と学力があれば、私が研究したい位です。

 

ということで、ニホンオオカミが実は生き残っているのなら、何とかして守って行きたいですね。そして、日本犬と猟師の復活。

 

参考:

オオカミやヤマイヌと呼ばれたシーボルトが残したニホンオオカミ標本の謎

総合研究大学院大学・岐阜大学

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/74/6/74_389/_article/-char/ja/

 

絶滅した日本のオオカミの遺伝的系統

岐阜大学応用生物科学部 石黒直隆

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/65/3/65_225/_pdf

The Japanese wolf is most closely related to modern dogs and its ancestral genome has been widely inherited by dogs throughout East Eurasia

https://www.biorxiv.org/.../10.1101/2021.10.10.463851v3.full

 

 

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